自動化が進んでいる新幹線や航空機(ハイテク旅客機)の自動化レベルは3ということができる.新幹線や航空機は,定常状態では自動運転や自動操縦が行われており,発信・停止時や離着陸時など,必要なときには運転士やパイロットが運転や操縦を行っているからである.新幹線や航空機では実際に機能しているレベル3は,自動車では二つの大きな問題がある.
一つの問題は,レベル3で自動運転中のドライバ(もはや乗客であるが)は,何をするか,何ができるかである.レベル3の自動運転の機能によるが,高機能のレベル3では,ドライバは居眠りや読書,パソコンを使った仕事などが可能であろう.しかしあまり機能が高くない場合は,ドライバは自動運転中といえどもシステムの監視を続ける必要がある.これは実は難行苦行で非現実的といわざるを得ない.筆者なら監視(レベル3)をやめて運転タスクを実行する(レベル2).
もう一つの問題は,自動運転から手動運転への遷移である.自動運転システムの故障時や緊急時にはシステムの障害がない部分を用いて道路の路肩に自動停止させるなどの対策は考えられている.しかし自動運転が突然に停止したとき,たとえドライバがシステムを監視していたとしても,ドライバはすぐには対応できない可能性がある.航空機では,自動操縦中に発生した障害のために手動操縦に遷移したとき,重大な事故が発生した例がある.巡航中にエンジンが故障し,航空機に対してパイロットの対処がまずかったために墜落は免れたものの重大な事故に至った例(1985年中華航空6便,B747型機)や,速度計の故障によって自動操縦が不可能になったときのパイロットの操縦が不適切であったために墜落した例(2009年エアフランス447便,A330型機)がある.航空機では,上記B747機の場合のように,障害発生から事故に至るまで時間的余裕がある場合があり,この場合は事故を回避することが可能となるが,自動車では時間的余裕が期待できないために事故の回避が困難になる.
自動運転中のドライバの役割や,自動から手動への遷移の困難さを考えると,レベル3の自動運転は考えるべきではないと筆者は思う.
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・自動運転でも,飛び出し時など物理的に事故を回避できない場合があることを認識する必要がある.自動運転では,ヒューマンドライバに比べて停止距離や制動距離が短くなるがゼロにはならない.
・自動化レベル3で自動運転中にドライバは何をしていいかという問題はまだ解が示されていないようで,一般にはシステムを監視するとされている.また手動運転に遷移するとき,自動運転で安全に路肩に停止させた後に手動運転を始めるという案も提案されている.
・新幹線や航空機では,膨大なインフラストラクチャを前提に訓練を受けた運転士やパイロットが電車や航空機を管制センタからの指示で動かしている点が自動車交通と本質的に異なる点である.
・自動運転に限らず現行の種々の運転支援システム(ACC,車線逸脱警報,車線維持支援など)は教習所で操作方法を教習すべきと思う.現在は自動車販売店で試乗させるなどしているがこれでは不十分であろう.この1月に国民生活センターから出た自動ブレーキについての報告は示唆に富む.
2018年1月25日
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